< クリーンルーム/バイオクリーンルームの概略説明
>
*ここではクリーンルームの概念を理解したい方、導入を検討している方を対象にした解説をしています。
<クリーンルーム>
クリーンルームはアメリカで生まれた概念で、 空間内の塵(コンタミ)を減らした部屋のことです。
具体的には、1フィートの立法体(各辺 約30cm、容積では28.3リットル)の中に、0.5μm以上の塵が
どれだけあるかで、『クラス100、クラス1000、クラス10000』とランク付けしています。
このクラスの後に付いている数字が0.5μm以上の塵の数になります。
またJIS規格ではクラス100は「5」、クラス1000は「6」、クラス10000は「7」とクラス表示されます。
この0.5μmの「μm」はマイクロ・メートルという単位で、マイクロとは1/100万 という意味です。
1mは1000mm、なので、1μmは1/1000mmと同じ意味になります。またフランス語では1/100万を
ミクロンと呼びますので、1μmは1ミクロン、と置き換えて言うことができます。(メートルは省略するのが普通)
さらに日本人には「フィート」という単位も、なじみがないので、「1フィートの立法体」を立方メートルに換算すると、
1m3の空間に、クラス100では、およそ3500個、クラス1000では35000個、
クラス10000では350000個の塵(0.5μm以上、すなわち0.5ミクロン以上)が あることになります。
この0.5ミクロンという大きさ(厳密には長さ)は、多くのバクテリア(細菌)より小さく、ウイルスより大きいですが、
ウイルスはサーフィンするように何かに乗って(≒付着して)空中を浮遊していることが多いので、
0.5ミクロンをターゲットにしたフィルターで クリーンルーム内の空気をろ過してやれば、
バクテリアおよび塵に付着したウイルスの侵入をかなりの確率*で防ぐことができます。
*フィルター滅菌の問題点としては、まず、赤痢菌・コレラ菌・結核菌等、0.5μm以下が存在します。
また菌やウイルスは有機物なため、加圧されてフィルターに送りこまれる場合は、例えばウエストサイズ80の人でも
70サイズ以下の穴をくぐろうとすればくぐれるのと同じく、加圧変形してフィルターを通過できる場合があります。
特に湿気のある空気や水中の菌などは滅菌フィルターの裏側(通過した後)に繁殖していることもあるぐらいです。
フィルターや菌が加圧によって形/サイズが変わらないように、空気や水を減圧してフィルターに送った場合は、
時間内に「ろ過処理」できる量が極端に減ってしまいます。また、フィルターの穴サイズの菌などが、フィルターで
せき止められるため、フィルターの目詰まりが多発し、フィルター交換の回数が著しく多く増える場合もあるので、
フィルターを選ぶ際は、穴のミクロン数だけでなく 、実際の時間当たりろ過量や、その結果(実際の処理能力)を
チェックする必要があります。
クラス1000とクラス10000のクリーンルームでは、空気ろ過フィルター付きの換気装置で外気をろ過しながら
部屋に送り込み、部屋の空気をそれぞれ1時間あたり以下の回数入れ替えることでクオリティを維持できるとされています。
クラス10000:30〜40回/h
クラス1000 :80〜100回/h
上記から、例えば35万個の塵がある『クラス10000』の部屋の、換気回数を約2倍にすると、
塵が35000個の『クラス1000』にランクアップさせることができます。
これらのクリーンルームでは、部屋の中の空気圧をあげておき(「陽圧状態」といいます) 、
部屋の ドアが開かれると部屋の中の空気が外に流れだすようにして、外部からの菌の侵入を防ぎます。
クラス100の場合は、1000や10000の場合とずいぶん違ってきます。
クラス100では、「一方向」に、1秒間に30〜50cm空気を移動させ続けて換気します。
たいていの空間では、最短距離になるのは天上から床までなので、『垂直一方向』の換気を行います。
天井全体から空気をまっすぐ垂直に床に向かって30〜50cm/秒の速度で吹き付け、
その天井全面から垂直に送られた空気を床全体で吸気できるように、床には小さな穴を等間隔でびっしり開けて
そこから空気を吸い込みます。天井の高さが2.5mとすると、50cm/秒の移動で5秒かかりますので、
すなわち「5秒で部屋全体の空気を入れ替える」ことになり、1時間では720回空気が入れ換わります。
このような換気構造にするには、床全体に小さな穴を開けて吸気するので、床の下にはその吸気を(排気するために)
流す空間が必要になり、そのような空洞構造の床に置ける装置は軽量である必要があります。
食品などの大量ライン用装置で、そのようなクラス100用に軽量化されたコンベア装置などは、まずありません。
また、上記のようなしくみになっていないのに ミネラルウォーター充填室などで「クラス100」とカタログに
書かれている場合などは、そのカタログ上の衛生面アピールの全てについて論拠を確かめる必要があります。
<参考:ウルトラ・クリーン・ルーム:"How a Microchip Clean Room Works"
from El Andar Magazine
<バイオクリーンルーム/バイオクリーン環境>
クラス100で管理するのは「コンタミ(極小のゴミ)対策」のためで、極めて細密なミクロン単位の電気回路を
書き込まなければならない半導体の製造などでは必要不可避でも、単に菌がいない環境にするのなら、
クラス1000、クラス10000等レベルに関係なく、他の方法で空気中の浮遊菌やウイルスを殺菌すれば十分です。
このように 塵の数ではなく、「微生物濃度」を管理したクリーンルームを「バイオクリーンルーム(BCR)*」と呼びます。
ウイルスによる病気の代表例としては、インフルエンザ、肝炎、髄膜炎、AIDS,SARS、エボラ出血熱、狂犬病、帯状疱疹、
手足口病、風疹、ナイル熱、などがあり、水中のノロ・ウイルスは食中毒の原因になります。
一般的な目安として、雲の上の空がクラス1000相当、一般的な事務所や食品工場はクラス100万、
人間が上腕を振っただけで6万〜20万の塵が発生するとされています。 塵ではなく微生物類に目を向けると、
市街地の空気1m3中に10万個単位の微生物が通常はカウントされます。また、カビ胞子は1立方メートルあたり
平均80個存在するというデータ(神戸市衛生局)があります。
カビは胞子の状態で運ばれて、物質に付着して菌糸を生やし出芽してカビになりますが、一般家庭で
室内空気1m3に、カビ(アオカビ、クロカビ、コウジカビなど)の胞子が数個〜数千個浮遊しており、
塵(ハウスダスト)1g中からは万単位のカビ胞子が検出されます。
それらの大半は日本の日常的な温度・湿度で、ほとんどの建材表面に繁殖可能です。
また土壌1g中には、カビで1,000〜10万、細菌は100万〜1,000万個、存在するともいわれており、
食中毒の原因になるような微生物も多く含まれます。それらが舞い上がって空気に乗り運ばれたり、
材料物・梱包材・靴・衣類・髪や手足に付着して屋内に運び込まれます。
物を搬入したり、人間が作業する空間では、それらに伴って運び込まれる菌があり、
それらが空気中に飛散したものを瞬時に殺菌することはできません。
そのため、それらの細菌類をバイオクリーンルームに持ち込まないようにする「水際防衛」が必要で、
具体的には、BCRに入るにはホコリや菌が付着しにくい素材のユニフォームや作業服に着替えて、
靴も履き替える、何よりまず手洗い、マスク、ヘアキャップの着用、などの対策を講じます。
それでも侵入してしまう細菌・微生物を殺菌するために「エア・サニタライザー」などで空気殺菌・表面殺菌を
行い、床や器具類の洗浄には殺菌効果があり残留物の発生しない「オゾン水」を使う、等による殺菌をします。
食品加工などでは、炭水化物の成分や湿度が多く、温度も高い環境になることが多く、そのような場所では
壁や天井、隠れた場所や床などにカビや菌が育ちやすくなります。それらが空気中に飛散するのを防ぐ
手段としてエア・サニタライザーは手間もかからず、長期間継続して効果を発揮します。また器機や床も
菌の付着や繁殖があるため、長期的な衛生維持にはオゾン水による洗浄の併用が効果的です。
さらに製品を最終段階で紫外線で殺菌する等で、製品の菌汚染を予防します。これらの対策が備わった
環境をバイオクリーン環境*といい、食品工場などに導入されています。
厚労省はHACCP(ハセップまたはハサップと読みます)による管理を、食品の加工を行う場所に
導入することを義務付ける方向で動いています。弊社では、HACCPに対応したバイオクリーンルームを
お客様の面積やシチュエーションにあわせて安価に設計・製造しています。現状施設の改造あるいは
衛生管理上の問題点を解決するための装置を導入するだけでHACCP対応化することも可能です。
またHACCP対応システム導入後に必要な従業員教育もフォローしています。
お気軽にご相談ください。
e-mail:
ask@m-n-w.com
*バイオクリーン環境、バイオクリーンルームの「バイオ」の部分を「バイオロジカル」と言うケースもあります。
しかし「バイオロジカル・クリーン・環境」という長い名前を使うことと、それが普及することは相反するため、
ここではバイオで統一しています。
*日本の計量法上はミクロンの使用が1997年から禁じられており、代わりにマイクロメートルを使用するようになっています。
■ 衛生/食品衛生の基礎知識
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