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UV表面処理:光改質/光洗浄/リソグラフィ
超微細な加工技術が集積する先端技術製品では、その加工に適合する新しい技術が必要です。
プロダクションでの光技術は加工精度がミリオーダーの時代にはほとんど無用でしたが、マイクロ
メートルの時代になって、ようやく有用な技術と認められました。今も開発期にありますが、今後も
製品の微細化が更に進んでナノメートルの時代になると、不可欠の技術に育つのは間違いありません。
またUV硬化・UV乾燥技術も、生産スピードのアップや生産性の向上、仕上がり完成度の高さなどで、
製品と製造の両面にメリットと高い付加価値をもたらす技術として、様々な方面に普及が進行しています。
短波長UVは固体表面の改質や洗浄に優れた能力を持ち、短波長UVとオゾンを使う「光表面処理」は
今や半導体・液晶表示素子・オプトエレクトロなどの分野で製品歩留まりを向上させるのに欠かせない
新技術に育っています。しかも作業環境を良好にしたり、生産量の増加に貢献する技術でもあるため、
プラスチック加工のように一般的な工業製品の製造にも貢献しています。
(光処理法は、特にエンジニアリング・プラスチックに高い効果を示します。)
UVによる表面処理には、「洗浄」と「改質」があります。どちらの反応が起こるかは素材によります。
ガラスやセラミックには洗浄作用だけが働き、プラスチックや金属には改質と洗浄の両方が働きます。
洗浄技術は「液晶表示素子」という、日本発の稀有な製品に巡り会い、
幸いに企業秘密として囲い込まれることがなかったため、広く普及が進みました。
改質技術の方は、最終使用者が各々の製品の製法を企業秘密として囲い込んだので、
普及が大いに阻まれています。
<表面改質・光洗浄の基礎技術>
電子製品素材や高機能性高分子材の接着性向上技術として表面改質があり、
表面改質による接着力向上は、主に二つの効果に依存しています。
(1)アンカー効果
被着体表面を粗面化して、アンカー効果により接着力を得ます。
(2)化学反応
化学反応により電気的極性を持つ官能基を表面に形成して、親水性と接着力を高めます。
従来の主流であった大半の表面改質法は処理面を粗面化するものでした。
例えば無水クロム酸混液でプラスチックを処理すると、化学的腐食により表面は
数 μ から 10μ を超える不規則な微細孔で覆われます。
無水クロム酸混液処理では、この腐食粗面のアンカーが接着力の基になりますが、
配線が微細化され配線パターンのラインスペース( L/S )が 10μm を下回ると、
以下のような問題が発生します。
(1)現在主流のサブトラクティブ法においては、銅張フィルム基材のエッチング面の
Cu 残渣が増大し、配線パターンのファイン化に様々な障害が起こります。
(2)電子素子の高速化が数 GHz を越えると、配線の粗面は高周波特性を乱す原因と
なります。
この両面から、平滑な表面が求められ、平滑でありながら接着力を高くする UV オゾン処理が
注目されるようになりました。 UV による表面改質での接着力向上は官能基の効果によるもので、
表面にダメージを与えない上に、高度な洗浄効果も併せ持つため、高機能製品の処理に適します。
( オゾンは高い酸化還元電位を持つため、酸化還元電位の低い有機物から水素や電子を奪い、
有機物を酸化・低分子化していきCO2とH2Oまで分解し、またオゾン自身も還元してO2やH2Oに
なります。 )
このU V による表面改質では、紫外線ランプが生成するオゾンを併用します。
このオゾンは改質反応のプロセスにおいて重要な役割を果たすため、
「UV オゾン法」と呼ぶことも多くなりました。
今では精密なドライ洗浄の主流技術となっている、このUVとオゾンを組み合わせた
光洗浄法の開発原点となったのは、弊社ネットワーク社が国内特許を取得した
「185nm光と254nm光を同時放射する低圧水銀ランプ」で、それを用いた技術から開発され、
LCD製造でのウェット処理の前洗浄、成膜工程の前洗浄等に広く使用されています。
UVによる洗浄=一般的には物体表面の有機汚濁膜を、UVおよびUVで生成させたオゾンを使って除去します。
それにより洗浄効果が増し、混入物や付着物によるトラブルが減って製品の品質が安定し、歩留まりが向上します。
また表面の難接着層を形成する有機汚濁膜を除去することで間接的に接着力の向上に寄与します。
UV洗浄はLCD・印刷関連にも応用され、インクの乗りを親水化作用で改善させたり、フォトレジスト現像後の
残さ(=残り物)除去にも応用されています。
UVによる改質=主な改質例としては、直接的に固体表面の接着力を向上させます。
強力な短波長UV光は、十数秒から数分でプラスチックの表面を改質して接着力と
付着力を向上させます。プライマー等の溶剤も使わないで済むため工程数の削減、
作業環境の改善、作業の自動化などに貢献します。
(DUV/EUV) リソグラフィ
現在、半導体や液晶パネルの基板製造に用いられているリソグラフィと呼ばれる技術があります。
半導体や液晶パネルの基板作成などの回路パターン等をレーザー光で焼き付ける技術で、
「フォトレジスト」と呼ばれる感光剤を、シリコンやガラスなどの基板に塗布して、その上に焼き付けたい
パターンを多色刷り印刷のように工程ごとに分解して書き込んだ「マスク」(レクチル)と呼ばれる遮光材を
のせてUVで露光させていきます。(1つのチップを形成するのに十数種類のマスクが必要です。)
このUV照射に用いられるのはDUV:波長200nm程度の紫外線で、最も密なもので数十nm〜百数十nm程度の
パターンをエッチングすることができます。半導体の回路は大変微細なので、ウエハ全面への一括露光はせず、
数チップずつ分けて繰り返し露光、つまり「ステップ&リピート」します。そのため装置は「ステッパ」とも呼ばれます。
数チップ分ずつに分けて露光する理由は、大きいエリアよりも小さなエリアのほうが端のほうまで精密に露光できるからです。
このリソグラフィ技術はCD-RW、DVD-RAMなどの光記録ディスクの、トラッキング用の数十nm程度の溝を作製するのにも
使われています。そして次世代コンピュータチップ開発のための有望な技術として、Extreme Ultraviolet(略してEUV)
と呼ばれる、13.5nmなど極めて波長の短い「超紫外線」を用いて半導体や液晶パネルの基板作成などに微細な回路
イメージを焼き付けるリソグラフィという技術があります。現在チップ製造に用いられているDUV(遠紫外線)リソグラフィの
20分の1程度の波長の光線を用いるので回路も微細にすることができ、乗せられる回路の数を増やせ、プロセッサの性能
を向上させることができます。このような精密な回路を載せる基盤の洗浄は、とても従来の湿式洗浄では間に合いません。
アッシング
例えばLSIを作成する際、LSI基盤上にシリコン酸化膜を作り、そこにプリントしたい形状をフォトレジスト
(と呼ばれる有機物。感光剤の役割を果たす。)で「下書き」します。その下書きの上からシリコン酸化膜
と反応するイオンを照射すると、下書きが上に乗っていないシリコン酸化膜はイオンによって除去され、
下書きはイオンとは反応しないので、下書きの乗っているシリコン酸化膜部分(=パターニング)は
除去されずに残ります。
このマスクとして残ったフォトレジストは、主にCとHによる構造になっていますので、
それに酸素O2を与えると、レジストはCOxやH2Oに分解されて除去できます。
このように「レジストを除去する作業」をアッシングといいます。
高集積化に伴う回路線幅の狭小化が進み、アッシングは一つのLSIを完成させるまでに約30回程度
行われるケースが多くなっており、そうなると、アッシングでのデバイスへのダメージはLSIへのダメージに
直結します。そのため高速作業でも低損傷のアッシング方法が必要となり、光アッシングの需要が増加しました。
光アッシング
光アッシングはオゾンガスとUVを用いたドライエッチングによるレジスト除去方法です。
UV/オゾン法は、従来の半導体薄膜形成工程で使用されていたプラズマアッシングに代わるもので、
プラズマのようにエネルギーの高すぎる荷電粒子によるチャージアップ等のダメージがない、超高集積型の
レジストパターン形成に適したレジスト・アッシャーです。
弊社では光アッシングの実験装置をご用意しています。
8インチと12インチのウエハーを枚葉式(=1枚ずつ)処理できる、実験・評価のための装置で、
オゾン以外のガスを導入して、色々な雰囲気における様々な実験ができる様に設計されています。
特長
1)高エネルギーの粒子によるチャージアップ損傷がない
2)重金属などの汚染の無い、クリーンな処理ができる
3)超高集積素子に適した低温処理が可能
4)基板加熱と高濃度のオゾン処理で高速処理を達成
5)各種ガスの導入による実験条件の拡張性が大きい
6)高照度長寿命の光源の採用により、高性能と経済性を達成
また、この実験機で得られた諸仕様を盛リ込んだ御社専用の生産機の製造もお受けしています。
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