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UV表面処理:光洗浄とエキシマランプ
エキシマランプは、エキシマ光を得られる放電用ガスをランプに封入したもので、
波長180nm以下のUV光を出させます。波長に赤外線量が少ないので、低温処理が
工夫なしで簡単にできるメリットがあります。
高機能化した製品の微細化が進み、配線回路の L/S
が 10μm を下回る
時代に入って、アンカー効果に頼る改質技術では機能的に不都合が多いため、
LSI を除いたデバイスの製造にはコスト面から、代替え技術も「電解/無電解
メッキの湿式プロセス」であることが求められています。
その要求を満足する技術が UV 照射法で、低圧水銀ランプまたはエキシマランプが
使われます。 ナノメートルの次世代技術としてUV技術を使って回路を全湿式プロセス
で直接形成する研究も進んでおり、この後必須技術に育つことは間違いありません。
エキシマランプは現時点では極めて高額で、照射対象物すれすれの短い照射距離での
セッテングが必要なため、エキシマランプ採用の装置は各対象物に限定された単用途で
高価なものになりがちですが、お客様のニーズにあわせてエキシマランプでもベスト・セレクト
製品をご提供させていただきます。
<UV オゾン法による、表面処理/光洗浄のメカニズム>
UVオゾン表面処理法には、改質と洗浄の効果があり、どちらの反応が起こるかは
素材に依存し、ガラスやセラミックには洗浄作用だけが働き、プラスチックや金属には
改質と洗浄の両方が働きます。
表面処理にはエネルギーの高い短波長 UV が必要なので、光源には
185nm と 254nm
を発光する低圧水銀ランプと、 172nm キセノンエキシマランプが使われます。
[光の働き+オゾンの働き]
照射する UV 光のエネルギーは、ほとんどの有機化合物の分子結合エネルギーより高いため、
分子結合が切れる確率が高くなる。 C-H 結合が切れると H 原子は軽いので直ぐに引抜かれる。
172nm と 185nm 線が酸素からオゾンを生成。(
240nm 以下のUV波長は酸素を分解する。)
254nm が ms (ミリ秒)単位の速さでオゾンを分解、高いエネルギーの活性酸素を生成。
活性酸素は有機化合物と反応して、 CO や CO(OH)
などの酸素に富んだ官能基を表面に形成。
富酸素ラジカルには極性があり、表面エネルギーを増加させ親水性を高め、親水性に依存する
接着力を強くする。
<エキシマランプと低圧水銀ランプの比較>
低圧水銀ランプからの185nm光は、空気中の酸素に吸収されオゾンを発生し、
254nm光はそのオゾンに吸収され、活性化された(=酸化力の高い、励起状)
酸素原子を生成します。それにより有機物の結合を切断し、有機物を水や炭酸ガスに
酸化分解・揮発させます。
172nm光を放射するエキシマランプの場合は直接Oを生成できますが、
エキシマランプで生成される活性酸素種は、ランプ表面直近でしか酸化反応が起こせず、
172nm波長の光は酸素に強く吸収されるため、大気中では照射距離が極端に短くなり、
大気中での有効照射距離は0〜3mm、臨界照射距離は8mmになります。
低圧水銀 / エキシマ、両ランプの比較のためにエネルギーの値を示すと
647:696(kJ/mol)と、エキシマランプのエネルギーが約7.6%高い
(92.96:100 より 100÷92.96 )ですが、低圧水銀ランプは、大気中での
有効照射距離0〜20mm、臨界照射距離は200mmであるため、照射距離などから
利便性を考えると、低圧水銀ランプのほうが応用範囲が広く(=エキシマは3mmまでの密着照射)、
一方、エキシマによる172nm 線のエネルギーは 185nm より理論値的には約 7.6 %高いので、
高いエネルギーが必要な特殊用途ではエキシマランプが有効、という選択肢になります。
また低圧水銀ランプより洗浄速度が早いとする他社資料があるようですが、
これは比較基準の照射距離の設定に誤りがあり、実験での照射距離をエキシマ=3mm、
低圧水銀ランプ=30mmで比較して、「エキシマが優位である」としていますが、
照射距離で10倍もの差をつけては、比較の意味がありません*。
接触角の変化は、その適性有効距離において両者に能力差はありません。
むしろ、光洗浄効果では、5mm距離の低圧水銀ランプと、1mm距離(窒素チェンバーの
合成石英ガラス面より)のエキシマでは、低圧水銀ランプのほうが、やや接触角が低くなる
(=洗浄効果が高い )結果が出ています。 この比較資料(概略)を必要とされる方は
環境事業部門 ( 電話 : 045-543-9437 / メール : catch@m-n-w.com ) まで、
お気軽に ご請求ください。
現状でエキシマランプから得られるメリットは、光洗浄UVランプでカバーできてしまうケースが
大半ですので、コストも含めて結果を得たい場合にはUVシステムをお勧めします。また、
エキシマランプ装置では、稼働時間が長くなるにつれ被処理物の処理状態が変化し、処理品質が
不均一になるという問題が報告されています。その原因は光源の劣化以外に、172nm短波長の
紫外線がガラスに変質をもたらし、ガラス板の透過率に変化が生じるためです。
ガラスの劣化は、照射の初期に大きく、照射時間が長くなると劣化の度合は小さくなるため、
予め、劣化の度合いの大きい、初期の劣化を生じさせたガラスを照射窓のガラスとして用いることにより、
装置の駆動に伴うガラスの劣化を低減することができ、処理品質の均一化が可能となります。
この ガラス照射窓に対する200nm未満の波長の紫外線積算光量が3000mJ/cm2以上となるまで
「 慣らし運転」を行うことにより、この後の通常運転に伴うガラス照射窓の劣化を抑制することが出来、
通常運転時の条件設定が容易となり、安定した紫外線照射処理を行うことができるとされています。
この項について、エキシマランプ装置メーカーのホームページでは一切言及がありませんが、日本電池(株)
は、この「ガラスへの慣らし照射」で特許申請を行っています。
2004年以降、特に問い合わせと実験装置の納品が急増しているのが光洗浄 ・光表面改質装置で、
今後、様々な製造場面で活用され、普及していく技術となることは間違いありません。この技術の
普及がエキシマランプ製品の普及にも繋がって行けば、近い将来には、価格的にも技術的にも
エキシマランプが一般的なものになることが期待できます。
[*参考]:「逆二乗の法則」
光源の点から測るのが原則ですが、
「照度(E)は、光源の光度(明るさ:I )に比例して、距離(R)の二乗に反比例」します。
式にすると>> E=I/R x R 明るさと距離の関係は、そのため逆放物線グラフ状のイメージになります。
この計算式は比較で使うので、例えば1mと50cm、10mmと5mmでは、それぞれ明るさは4倍違うことになりますが、
実際には、周囲からの回り込み露光などもあり、右肩下がりの直線グラフに、ほぼ落ち着きます。
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